漆黒の花嫁 - リラの恋人 -
変な館みたいな場所に着いて、
変な肌を露出させるようなドレスを着せられて、
変な部屋にあたしは閉じ込められた。
アンティークの化粧台。
鏡に映るあたしは、
まるで昔のヨーロッパの映画に出てくる姫君のような格好をしていた。
この夢の世界で、肩まであったあたしの髪は長い設定になっているらしい。
腰まで伸びた真っ黒な髪がドレスにはミスマッチだった。
のろのろとベッドに横たわる。
何もする気が起こらない。
それくらい、
あの青年に裏切られた事が尾を引いていた。
ぐるぐる。
回るように頭に浮かぶ。
消しても消しても、
また考えてしまう。
なんでかなんてもう分かってる。
けど、
あたしは目を逸らしていたいんだ。
また恋をするのが、
‥こわいから。
そう思いながら、
目を閉じる。
せめて
名前だけでも
聞いておけばよかった‥。