漆黒の花嫁 - リラの恋人 -


変な館みたいな場所に着いて、

変な肌を露出させるようなドレスを着せられて、

変な部屋にあたしは閉じ込められた。




アンティークの化粧台。

鏡に映るあたしは、
まるで昔のヨーロッパの映画に出てくる姫君のような格好をしていた。



この夢の世界で、肩まであったあたしの髪は長い設定になっているらしい。

腰まで伸びた真っ黒な髪がドレスにはミスマッチだった。




のろのろとベッドに横たわる。


何もする気が起こらない。


それくらい、
あの青年に裏切られた事が尾を引いていた。



ぐるぐる。
回るように頭に浮かぶ。


消しても消しても、
また考えてしまう。



なんでかなんてもう分かってる。

けど、
あたしは目を逸らしていたいんだ。



また恋をするのが、
‥こわいから。



そう思いながら、
目を閉じる。







せめて
名前だけでも
聞いておけばよかった‥。
< 23 / 390 >

この作品をシェア

pagetop