漆黒の花嫁 - リラの恋人 -
低いのに、甘く胸に響く。
泣きそうになってしまいそうで、あたしは唇を噛み締めて少しだけ息つぎをした。
ゆっくりと靴を鳴らして近づいてくる音を聞いてから、振り返る。
「‥アード‥さん‥‥」
薄い蜂蜜色のお酒が入ったグラスを持ってる。
灰色の、スーツに似ている装飾された服を着てて、凄く眩しい。
アードさんが‥小さな微笑をあたしに向けて、そこに立ってた。
『同じような事が起こっても、絶対にあの力を使うな』
コルアはそう言った。
『お前の命を喰う』って。
けれど‥
こうして彼の笑顔をもう一度見るためだったら‥いつでも‥何度でも。
きっとあたしは躊躇わない。
何が起こったって、構わないよ‥。
貴方の傍に居られるなら。
そう思ってしまうあたしは、どうかしてるのかな‥?