漆黒の花嫁 - リラの恋人 -
こうしてまた会える事が嬉しくて、言葉が出なかった。
綺麗なアードさんの顔が、涙で滲んで見づらくなる。
そんなあたしに気づいてるのかいないのか、彼は少し首を傾げながら、近くの木の幹に背中を預けた。
「‥続けて?」
そんな声と同時に、聞いた事のある音を立てて、あたしたちのいる空間が結界で包まれたのを感じた。
‥言わなくても、察してくれてるんだ‥。
言われるままに、リリーを少し爪弾いた。
最初の音をリリーに合わせて口ずさみながら、チラリとアードさんを見る。
彼は、目を伏せるようにしてその音に耳を傾けてた。
その姿はなんだか儚げで、さっきジアリーヌ姫を見つめてた彼を思い出した。
‥誰を、想ってるの?
そんな事、分かりきってるのに。
そんな寂しそうな顔、しないで。