蝶々、ひらり。
それから、一時間後。
俺は眠ったふりをして、隣に横たわる彼女の気配に神経をとがらせていた。
高校二年から坂上に片想いをしていた彼女は当然ながら初めてで、高校1年から彼女に片想いをしていた俺も同じように初めてだ。
そんな大切な瞬間を、もぎ取るように掴んでしまった事に軽い後悔を覚えていた。
彼女はただ天井の蛍光灯を見つめていた。
静かに涙が枕に流れ落ちている事に気づいていたけれど、かけるべき言葉が見つからない。
やがて彼女は衣服を身につけると、眠ったふりを続ける俺を置いて部屋を出て行った。
そして翌日会った彼女は、平然とした顔で俺に言う。
「今度、デートしようよ。大輔」
「あ、ああ」
有紀の態度は、恋人としてのものに変わっていた。
安心したと同時に疑念も湧気上がる。
俺を受け入れてくれたのか?
彼女の恋心を無理やりもぎ取った俺を。
確かめることさえ怖くて、有紀の態度に甘えた。
でも、力ずくで曲げてしまった心は、いつ形を変えるか分からない。
俺はその日が来るのに怯えながら、ただ有紀を失いたくないと願う事しかできなかった。