蝶々、ひらり。

 誰も、俺達の間にある闇には気づいていなかっただろう。

周りの友人達は、入学当初から仲の良かった俺達が健全な経緯を経て進展したものだと思っていたようだし、実際傍目には、俺たちは普通の恋人同士のように付き合っていた。

大学でもほぼ一緒にいて、週に一度はデートと称し二人で出かけ、キスもセックスも普通の恋人同士のようにしていた。

けれども、有紀から「好き」と言われた事はなかったし、俺も言うのが怖かった。

体を重ねてさえ愛の言葉を囁かないのは、どこで有紀がこの関係を納得していないからじゃないかと思えて。

それに、時折有紀が坂上を見つめているのに俺は気づいていた。
彼女の恋はおそらくまだ終わってない。
ただ、行き場がないから俺の傍にいるだけなんだ。


 就職活動中、大抵の学生が地元の教師を目指すこの大学で、有紀は一般企業への就職を志望し東京での仕事を決めた。

それが答えなんだろうと、漠然と思った。

彼女は、卒業を機に俺から逃げるつもりなんだろうと。




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