僕と御主人(マスター)の優雅な日常
仮面を引き剥がしたい。 side:御主人(マスター)
「セド」、そう呼べばすぐに返事が返ってくる。私の傍にいるのは、いつだって真っ直ぐで頑張り屋な従者だ。短く切ったクリーム色の髪がまだあどけない顔を包む。セドは現在15歳。まだまだ遊びたい盛りだろうに・・・。
「今日は希少価値の高い紅茶にしました!」
「・・・キーモンか」
セドが入れた紅茶は、独特のスモーキーフレーバーで蘭の花香が極上品のものだ。今日はなにか特別な日だったか・・・? 疑問が顔に出てしまったのだろう。セドは苦笑しながら言った。
「今日でロシュジャクラン家に雇われて1年になるんです」
もうそんなに経っただろうか? セドはどんな気持ちでこの紅茶を注いだのだろう・・・。
「・・・僕はロシュジャクラン家に雇われて、御主人(マスター)の従者になれて、本当によかったと思っているんです」
視線を向ければ、儚げな様子でいる。だからほっておけないんだ。
「あの家を出れてよかったと思っています」
その言葉がどこまで真実なのか図ることができない。ちゃんと目線を合わせて言葉を紡いでくれなければ、わからないんだ。
「・・・セド」
私の声に反応して、セドは顔を上げた。
「御主人(マスター)・・・」
「この家にいる間は、私の管轄にある。だから、どんな格好をしても構わないんだぞ?」
ああ。もどかしい。本当はもっと伝えたいのに。1年も一緒にいたのに、こんな言葉しかかけられない。それでもセドは察したようだった。
「いえ。構わないんです。僕は・・・」
すぐにそうやって視線を外すから、本当の気持ちではないことがわかる。 素直になればいいのに。そのために、お前を・・・。
「僕は、僕でいなくちゃならないから」
ああ。まだだめなんだ。この家で囲ってしまっても、君の身体さえ自由にならない。
「いつかその仮面を引き剥がしてやるからな」
「え!?」
小声で呟いたため、セドには聞こえなかったようだ。それでいい。いつか本当の気持ちを話させてみせる。だから、今は。
「一緒に飲むぞ。1年を祝して」
「はい!」
少なくとも笑って過ごせるように、私は私のやり方で。
【End】