僕と御主人(マスター)の優雅な日常
早く元気になってくれ。 side:御主人(マスター)
何を焦っているんだ? お前はまだ子どもで、背伸びなんて必要ない。最近何を不安に思っているのか、情緒不安定なのはわかっていた。それに対処してやれなかったのは、まだまだ力不足だからだと反省せざるおえない。
傘を持たずに出かけたであろうセドリアを歩いて探す。馬車で探した方が早いのだが、徒歩の方がセドリアの心に近付けるような気がした。
案の定セドリアはびしょ濡れで。私の腕の中で意識を失ってしまった。身体が熱いのがわかる。酷くならないうちにと急ぎ足で家へと戻り自室に入る。
ベッドに一直線に向かおうとして我に返る。セドは濡れたままだ。このまま寝かせるわけにはいかない。セドは女であることを隠しているから、メイドも呼べない。つまり。
「私が脱がせるのか・・・」
心の中でセドに謝りながらボタンをひとつずつ外す。熱のせいであろう荒い息に胸が上下し、下心に飲み込まれそうになる。服を脱がせれば、まだ発達途中の胸が見えてしまった。「御主人(マスター)」と笑顔で呼ぶセドの女の部分を見てしまい、どうしていいかわからなくなった。
早く脱がせて身体を拭いて、新しい服を着せて寝かせる。求められる動作は理解しているはずなのに、目線が逸らせない。あ、ホクロ。右胸の脇にホクロがひとつあった。これからまた成長していくと考えると、我慢できるか不安になる。それでもセドを選んだときの気持ちを思い出し、なるべく身体を見ないようにして全てを終わらせた。
セドが心配で、仕事が手に付かない。仕方なく自室で仕事をしている。
「御主人(マスター)・・・」
声がしてセドを見るが、まだ寝ているようだ。寝言で名前を呼ぶなんて、どんな夢を見ているんだか・・・。近寄って頬を撫でると、うっすらと目を開けた。
「すまない・・・起こしたか?」
まだ意識が朦朧としているのか、焦点が定まっていない。
「役に・・・たて、なくて・・・ごめんなさ、い・・・御主人(マスター)・・・」
涙をを零し、掠れた声で謝ってくる。
「不安がるな。なにかあるなら私に相談しろ。セドは十分役に立っている・・・。謝るのなら、早く元気になれ」
口下手なせいでこんなことしか言ってやれない。それでもセドは嬉しそうに笑った。
「ありがと、う・・・ございま・・・す、御主人(マスター)」
そのまま目を閉じるセド。仕事に戻ろうと立ち上がると、動けないことに気が付いた。よく見ると、左手の袖をセトが握り締めている。行かないで、ということなのだろうか? 頼られていることを嬉しく思い、そのままベッドに腰掛けた。早くよくなることを祈りながらセドの髪を梳いた。
【End】