やっぱり、無理。
「まりあー、山岸と別れたって、本当?」
そう言って、昌が上機嫌で私の髪をクシャリと撫でた。
「・・・どこ情報、なわけ?」
昨日からまた吸いだしたメンソールのタバコの煙を横を向いて吐き出すと、私は昌を見た。
だるい・・・。
昨日は、全然眠てないし。
「あー、経済のー、あの何て言ったっけー?ちょっと、ちっちゃくて・・・ツケマしてまーすって、コ・・・えーと・・・。」
あのコか・・・。
「その情報なら、正解じゃない?」
メンソールを深く吸い込み、他人事のようにそう言った。
なんて言ったって、現場にいたんだから、正解でしょ。
だけど、昌が私の言葉に、大きく反応した。
「ええええええっ、本当かっ!?本当に、山岸と別れたのかっ!?」
うっさい。
私は眉間にシワを寄せると、昌を睨んだ。
「うるさい。別れたからって、別にイイでしょ。」
「いや、いや、いやっ。よくないしっ。まりあがフリーってことだろっ!?」
鼻息荒いって、昌。
若干、引き気味で昌を見る。
「あーーーーー、引くなよっ。俺、今、チャンスだと思ってんだからっ!!来た来た来たーーーー!!苦節6年目にして、俺にもチャンスが来たーーー!!」
1人興奮している昌を放置し、メンソールをもみ消すと。
運ばれてきたやっこ定食に集中する。
だけど、興奮状態の昌に割ったばかりの割りばしを取り上げられた。
「ちょ、ちょっとー。まりあ、真面目にきいてくれよっ!!」
「・・・割りばし返して。」
「真面目に俺の話を聞いてくれたら、返すしっ。」
私はため息をついて、昌を見た。
「早くして。」
「俺と、つきあって。」
「・・・割りばし返して。」
「割りばし返したらっ、付き合ってくれるかっ?」
約束を反故にするヤツは、無理。
まして、こういう事に交換条件を持ち出すヤツなんて、無理。
私は、再びため息をつくと昌をスル―して、店のおばちゃんに新しい割りばしを頼んだ。
昌は、高校からのトモダチ。
私の中では、それ以上でもそれ以下でもない。
それは、昌も知っているはずなのに―――
それから私は、無言で。
鼻息荒い昌を完全無視して、さっさとやっこ定食を食べ終え立ち上がり。
昌の言葉も聞かず、食器を戻すと私は学食を後にした。
昌の中では鉄板の、唐揚げ定食にもろくに手を付けず、必死で追いかけてくる。
「まりあ。」
無視。
「まりあっ。」
無視。
「まりぁぁぁぁっっ!!」
無視・・・しようと思ったが、腕を掴まれた。
思わず、またため息。
お前は、無理・・・と言おうと思ったが。