やっぱり、無理。
「まりあちゃん!こんなバカだけど、まりあちゃんの事このバカ大好きなのよっ。6年前、まりあちゃんまだ15歳だっていうのに、嫁にする女がみつかった、って言いにきてね?・・・まりあちゃんのところの話も全部聞いているから・・・ああ、まりあちゃんのご両親も別々にだったけど、ここまでご挨拶にいらしてくれてね?うちは・・・両親ももう他界していて、この家は私がもう継いでいるから、私が親代わりなんだけど。もうこんな勝手な男は一生結婚できないって、老後が心配でねー。本当にまりあちゃんに面倒見てもらえると助かるのよ・・・ということで、北島まりあさん・・・だから、悪いけど・・・後生だから人助けと思って、このバカと結婚してくれない?」
何故か、俺の結婚なのに・・・。
姉ちゃんがまりあにプロポーズをしやがった。
しかも、まりあもまりあで。
結婚する相手は俺なのに、姉ちゃんに。
「はい、よろしくお願いします。」
って、返事をしやがった。
これって、あり得ねぇんじゃ、ねぇか?
「おいっ、何で俺に返事しねぇんだよっ!?結婚するのは俺だぞっ!?」
ムカついて、まりあに詰め寄るが。
まりあは、例のそそるような目をしやがって睨んできた。
「だって、ジローは私に結婚しようって言わないじゃない?・・・言わないのに返事できないでしょう?」
なんて、生意気なことを言ってきやがった。
んなの。
『結婚しよう』なんて、ベタなこと・・・言えるかよ・・・。
黙り込む俺に、姉ちゃんが面白がって。
「あら、せっかく代わりに私がまりあちゃんに頼んであげたのに、はっきりしない男ねぇ。言わせてもらうけど、あんた英米文学研究しているわりには、実際の会話が足りないのよ。言葉っていうのはねぇ、ちゃんと言わないと伝わらないのっ。ちゃんと伝えたかどうかで、その後、その言葉を支えに生きていける場合だったあるのよ?」
姉ちゃんの言葉は。
俺の事にひっかけて、お袋の事を言っているようにも聞こえた。
そんなこと言われたら・・・もう、しょうがねぇじゃねぇか・・・。
俺はため息をつくと、まりあに向き直った。
まりあも俺をじっと見つめる。
俺は深呼吸をひとつすると、覚悟を決めた。
「お前がいねぇと、俺は・・・もう無理、なんだよ。だから・・・結婚しろ。」