やっぱり、無理。
いきなり、ジローの実家に連れていかれて。
もう、驚きの連続だった。
岐阜の出身だとは聞いていたが・・・まさか、村一番の名家だとは知らなかった。
まず、ジローの車を降りて、着いた目の前の家はお屋敷のような日本家屋で。
後で聞いた話だが、先祖はそこの地域の領主だったようで。
山とはいえ、標高はそれほど高くなく、豊かな川が流れていて。
杉、檜が豊富にあり、温泉も湧きでて、昔から豊かな村だったそうだ。
まさか、ジローがそんな由緒ある家の息子だったなんて・・・そう思うと、気後れのような気持ちが心を一瞬にして覆っていった。
だけど。
強引なジローに、無理やり玄関から上げられ、戸惑う私に。
ジローのお姉さんが、温かく迎えてくれた。
ジローには、かなりの口調だったけれど。
驚いたことに。
お姉さん・・・長子(ながこ)さんは、ジローと違って小柄で、日本人離れした彫りの深い顔立ちで。
まるで、ビスクドールのような美しい人だった。
まあ、性格は完全にジローに似ていて・・・というより、ジローさえもかなわない強い性格だった。
話をしていくうちに、どうやらジローは既に私と結婚することを決めていたようで。
私が、気が付いていなかったことに腹を立てた。
てゆうか、お姉さんのいうとおり、エスパーじゃないし。
さすがに、空気ではわからない。
でも、ジローは私の事をとても大切に最初から考えていてくれたんだと・・・嬉しかった。
お姉さんには・・・最初から私の事を話していたようで。
家の事情も・・・理解していて。
一番話したくない私の戸籍については、何も説明することはなかったのだ―――
もっと驚くことに、薫さんがこの村の近くで2時間ドラマの撮影が偶然あり、4年程まえだが・・・お姉さんに挨拶に来ていたらしい。
ママはママで。
ママのお店は年末仕事納めの後、忘年会を兼ねて慰安旅行を毎年していて。
私とジローが付き合いだしたその年の暮れ。
ジローに手配させて、この村の温泉を慰安旅行先にして訪れたらしい。
そして、お姉さんに早々に挨拶を済ませていたらしく。
私の知らないところで、何の障害も無くなっていたのだ。
しかも、お姉さんからジローと結婚してやってくれ、なんて頼まれて。
反対なんて全くなく、望まれていると・・・驚いた。
だけど、それはとてもありがたいことで。
お姉さんのそのままの、ジローを思う気持ちが伝わってきて・・・とても、嬉しくなった。
「ホント、思い立ったらの、その性格。いい加減にどうにかしなさいよっ。まったく、慌ただしいったら。あ、まりあちゃん、11月に母の13回忌があるから、その時に、慈朗の婚約者だって、親戚に紹介するからね?絶対に来てね?今度は、慈朗なんてどうでもいいから、まりあちゃんだけでもゆっくりして行って。いい温泉もあるし、蕎麦も地酒も美味しいのよ!ああ、家具なら、家で好きな家具つくってあげるから、遠慮しないでね?それから――「ああっ、姉ちゃん、うるせぇよっ。また11月にくるんだからよ、また連絡すっから。ああ、それと、そん時、まりあのこと嫁って紹介しろよ?帰ったら籍だけ先にいれるし。」
「はっ!?」