秘め恋*story1~温泉宿で…~
今日もまた、あの花は凛とした表情で咲いていた。
『カラー』
もう忘れたりなんかしないんだろうなぁ。
花言葉は“素晴らしい美”…
だったよね?
「ありがとう。」
その花にありがとうと囁く。
あなたのおかげで私は、
一晩だけど、恋ができた。
現実逃避の旅じゃなくなった。
さて、帰ろう。
思い立ち、スッと立ち上がる。
「葉月さん。」
「酒井くん…。」
振り向くと、そこには仕事着の彼が立っていた。
昨日の夜の彼を思いだし、乙女のように顔を赤くしてしまう私。
バレないように少し俯く。
「色々、お世話になりました。
いい旅になったわ。ありがとう。」
「いえ、私は何も。」
「それじゃ…」
もう“俺”って言わないんだ。
そうだよね、お仕事だもんね。
言葉遣いは大事。
うん。私こそ見習わなきゃ。
小さな鞄を肩に掛けると、歩き出した私。
「葉月さんっ…。」
「……ッ!?」
気づいた時には、彼の力強い腕に抱き寄せられていた。
心臓が一気に暴れだす。
「昨日のことは…」
何を言うんだろう。
ただそんな雰囲気になったから本気にするなって言うのかな…
「ちょっと私も酔ってたから、気にしないで。期待とか…」
“期待とかしないから…”って言うはずだったののに。
彼は私から少し離れると拗ねたような笑みで…
「期待してください。」
なんて言うから…
「昨日のことは、若気のいたりとかそんなんじゃないです。」
「ご、ごめんなさい、ちょっと待って?
何かいまいち頭が回んなくて…」
一旦整理しよう。えっと…
なんておっとり考えてる私。
でも、考える必要はないみたい。
「俺、葉月さんに一目惚れしてしまいました。それでも、期待…してくれませんか?」
やっぱりこの子は真面目でいい子。
ちゃんとはっきり言ってくれる。
私みたいなお疲れ女子には回りくどいより、こうやってストレートに言ってくれる方がいい。
私も素直になってみようと思える。
「私、酒井くんより結構年上よ?
女子力も枯れ気味だし、婚期も逃してるし、そんな女、面倒くさいわよ?」
そうそう、君の回りにはもっと若くてピチピチがいるわよ?
彼は、思わずキュンとしてしまうような可愛い笑顔で私を見つめた。
「俺はもう葉月さんに夢中なんです。」
久々にドキドキする恋。。
そこの私みたいなお疲れ女子、
明日にでも独りぼっちの旅に出てみない?
きっとそこにはあなたを癒してくれる誰かに出会えるはず…。。
*end*


