秘め恋*story1~温泉宿で…~




朝、何だか懐かしい身体の疲労感を感じながら目を覚ました。




しっかり掛けられた布団。


緩く着せてある浴衣。


枕元にはお水の入ったペットボトル。



彼らしい優しい心遣い。



でも、隣にはもう彼はいない。


昨夜、あんなに激しく抱き締め、熱くとろけるようなキスをしたのに…




「だから…ダメって…。。」




もっと拒否していたら、こんなに後悔しなかったのに。



忘れられるわけないじゃない。。



もう、こんなにあなたを想ってしまってる。



静かに涙が伝って、枕のシーツに染みをつくっていく。



私はひとしきり泣いた後、心に誓った。



もうこの恋はこれでおしまい。


たった一晩だけのこと。


忘れてしまえば、なかったことにしてしまえば
今までと何も変わらず、仕事に没頭できる。



やっぱり私は仕事しかないんだ。


よし。


バイバイだ、酒井くん。
久しぶりに自分が女だって感じさせてくれてありがとう。



心の中でさよならした私は、朝食を終えるとチェックアウトまで時間はたっぷりあったけど、荷物をまとめた。



そして、ロビーに向かう途中…




「あ…」




あの小さな庭園が見えた。


最後にもう一度、あの花を見て帰ろう。
私はそう思い、庭へと足を向けた。

















< 14 / 15 >

この作品をシェア

pagetop