秘め恋*story1~温泉宿で…~
朝、何だか懐かしい身体の疲労感を感じながら目を覚ました。
しっかり掛けられた布団。
緩く着せてある浴衣。
枕元にはお水の入ったペットボトル。
彼らしい優しい心遣い。
でも、隣にはもう彼はいない。
昨夜、あんなに激しく抱き締め、熱くとろけるようなキスをしたのに…
「だから…ダメって…。。」
もっと拒否していたら、こんなに後悔しなかったのに。
忘れられるわけないじゃない。。
もう、こんなにあなたを想ってしまってる。
静かに涙が伝って、枕のシーツに染みをつくっていく。
私はひとしきり泣いた後、心に誓った。
もうこの恋はこれでおしまい。
たった一晩だけのこと。
忘れてしまえば、なかったことにしてしまえば
今までと何も変わらず、仕事に没頭できる。
やっぱり私は仕事しかないんだ。
よし。
バイバイだ、酒井くん。
久しぶりに自分が女だって感じさせてくれてありがとう。
心の中でさよならした私は、朝食を終えるとチェックアウトまで時間はたっぷりあったけど、荷物をまとめた。
そして、ロビーに向かう途中…
「あ…」
あの小さな庭園が見えた。
最後にもう一度、あの花を見て帰ろう。
私はそう思い、庭へと足を向けた。