守護れい子!
 
 
 
坂吉先輩に少し興味を持ったあたしは、彼について色々聞いてみた。同じクラスの子や、休み時間に遊びに来た別のクラスの子達などなど。どの子に聞いても、ミッチーと同じように「気味が悪い」とか「根暗オタク」と言うばかり。



確かに知名度は高いが、良い意味ではないようだ。



そんな事を考えながら下駄箱へ向かう。ミッチーは告白に呼ばれたし、一人で下校をするのは久し振りだ。



「あ、ちょっといい?」



自分の靴を取り出したと同時に、背後から声を掛けられる。この声は聞いたことがある。



「はい、なんですか?」



振り返って見ると、先ほどまで頭の中を占めていた人物、坂吉先輩が立っていた。



「うーん、どうしよう。じゃあ握手」

「は?」



この人は何を言っているのだろうか。握手?なんで握手?



「その前に、ハンカチさんの名前教えて貰ってもいい?」

「……ハンカチさん?」

「うん、ハンカチさん」



どうしよう、意味が分からない。この先輩、意味が分からない。ハンカチさんって誰だ。もしかしてあたしか?



「あの、あたしの名前ですか?」

「うん、ハンカチさん」



何だこの人。ハンカチ落としたからハンカチさんって言ってんのか?



……ツッコミたい。



もの凄くツッコミたい。



じゃあもしハンカチじゃなくて、ポケットティッシュを落としてたら、ポケットティッシュさんって呼ぶつもりだったの?カツラ落とした人がいたら、カツラさんって言うつもりなの?



「えっと、文場笑理、です」

「………文場さんね、じゃあよろしく」



坂吉先輩が手をサッと出してきた。握手をしろという事だろうか。



「よ、ろしくお願いします」



何か変だ。気味が悪いとかじゃなくて、変だ。この先輩変だ。



「あ、じゃあ、失礼します」

「うん、気を付けてね」



あたしは軽く会釈し、少し小走りでその場を去った。



 
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