先回りはしたくてしてる訳じゃないんですけど!
まさかこんな事になるなんて思ってもみなかった


「ん~美味しーい!!」


只今プレミアムプリンを食べながら大満足の私。


「お前、ちゃんと冷蔵庫の中身くらい確認しろよ。」

彼は飽きれたようにため息をついている。


さっきまでの経緯を説明すると、
なんとなんと冷蔵庫を開けたらプレミアムプリンがあったんです!
しかも2つも!


『お前が先週からプリンプリンって鬱陶しいくらいに話してくるくせに一向に買う気配がないから買ってきてやってたんだよ。そしたらお前も買ってきてたから俺の分は食べた。何か文句あるか。』


文句なんてありません!
あー私幸せ!

まさか彼が私の為に
もう一度言いますが
わ た し の た め に わざわざ並んでプリンを買ってきてくれていたなんて………!


「美味しいよー!
あともう一つ残ってるなんて…
いつ食べようかな?晩御飯の後に食べようかな?明日の朝に食べようかな?
政孝、ありがとうね。」


「調子のいい奴。さっきまでは泣きべそかいてたくせに。」


「だ、だって政孝が…」


「俺が何だよ…」


こ、怖い…


「まだ怒ってる…?」


「怒ってる訳じゃない。お前のアホさに呆れてるだけだ。」


「…ごめんなさい。」




*****


最近彼女の様子がおかしいなとは思っていた。

もともとおかしな女だが一段とおかしいのだ。



何故か無理やり毎日朝行ってきますのキス、夜はお帰りなさいのキスと言う名の攻撃を受ける。
彼女はキスのつもりなんだろうがこっちはネクタイを引っ張られて首を締められ歯がぶつかり合うような勢いだけのキスをされていい迷惑だ。
最初にこれを実行された日はネクタイを結び直さないといけくなるし(勿論彼女に直させた)、唇が切れて血がでるし(唇の痛みで仕事中も彼女のことを思い出してしまい集中できなかった)、本当にいい迷惑だった。


しかも、疲れてゆっくり風呂に入っていたら彼女が乱入してくるのだ。
『背中流すよ』なんて気味の悪い笑顔で言われ、全力で断ったが『まぁまぁ遠慮しないで』と無理やり体を洗われた。


挙げ句の果てには頼んでもないのにベッドで政孝に奉仕してきたのだ。
やめろと言っても嫌だといってきかない彼女の口の中に出してしまった後のなんとも言えない心情。
絶対に嫌だというわけではないが、好んでしてもらいたいとは思わない。
自分の大事な女に苦しそうな顔をさせて不味いものを飲ませるような趣味は政孝にはないのだ(『無理に飲むな、出せ』と言っても毎回飲む彼女のことが愛しくて仕方なくなり癖になってしまいそうなので余計に自分にイライラする)。



そして、さっき休日をのんびりしようとしていたら彼女が柔らかい体を惜しげもなくすり寄せてきたかと思えばプリンがどうのこうの言って、彼女がらしくもなく怒り始めたのだ。


しかも自分の部屋に帰ると言い出す始末。


政孝にとっては顔面蒼白モノである。
彼女が怒ることはここ数年付き合ってきたが1度あるかないかくらいなのだから仕方ない。


政孝が何を言おうと彼女はいつも受け流すし、その心が大らかで底抜けにポジティブな彼女だからこそ政孝も彼女の前ではありのままの自分でいられるのだ。



政孝は最初彼女が何故プリンを食べたことに彼女がこんなに怒り出したのかよく分からなかった。
だって、プリンなら冷蔵庫にあるのだから。


まさか彼女が冷蔵庫の中身を見ないことは無いだろう。
昨日の晩と今日の朝にご飯を作っているのだから。
というか、彼女は自分で買ってきたくせに昨日の晩は『政孝の分も買ってきたの!』と政孝の夕食後のデザートに出してきたかと思えば自分は食べずにアイスを食べていた。
なんとも不可思議な女である。

このプリンが食べたかったのはお前じゃないのか?
とツッコミたくなったし、
俺が並んでまで買ったのはなんだったんだ。
と少し落ち込みそうになった政孝だ。


だが食べてみるとかなり美味しかったので並んだかいはあった。



しかし彼女は目の前でプリンが原因で涙目になりながら政孝を拒もうとするのだ。

政孝にとっては濡れ衣もいいところである。


そして、頭が少し冷静になり始めてからある結論に辿り着いた。
彼女は政孝もプリンを買ってきていたことに気づいていないのではないか。と。



案の定、彼女は気づいていなかった。
なんなんだ本当に。


政孝は疲れた。
彼女に振り回されることに。


だが彼女は隣で嬉しそうに念願のプリンを食べているのだ。
それはそれは嬉しそうに。


自惚れかもしれないが政孝は彼女が何故こんなにも嬉しそうにしているのか分かっているつもりだ。


彼女の為に政孝が買ってきてくれたこと。が彼女の幸せ指数をあげているのだ。


たかがプリンを少し並んでかったくらいでこの喜びよう。
それくらいでこんなに彼女は喜んでくれる。



―あぁ、やっぱり俺は……




菜々美はプリンに夢中で政孝がどれほど甘い視線を彼女に向けているかを知るよしもないのだった。












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