瞳が映す景色




――――
――



新年度を迎えた。


担任クラスを持つことになったオレは、春休みから激務に忙殺され、プレッシャーに腹を下した。


そんな忙しい日々は、嘆いている暇など与えてはくれず……助けられたといえば、それはそうで。


『片山先生が先生でよかった』


ここでのオレは、傷付けてでも守ろうとしたものだ。色々と自業自得の結果ではあるけれど、全てを台無しになんかしてたまるか。


恥じることのない教師になろう。




四月に入り、生徒の音が響く校舎内――


よく似た足音を耳にした時、


読んでいた文庫本と同じタイトルを目にした時、


独りきりのアパートの自室で、寿司屋の湯のみに注いだココアを飲んでみた時、


ドライフラワーになった花束と、一輪の白い花を見つめた時、


――想い出が、消えることない波紋となって、甘く甘く心が痛む。同時に、とても幸せを感じてしまう。


なんて――。

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