瞳が映す景色

片想いが一番楽しいというのを聞いたことがある。その通りかもしれない。


特に、もう二度と会えない人を想うことの容易さと、愛しさが深みに嵌まる快感は最高かもしれない。相手の気持ちなどお構いなしに、独りよがりな幸せを得られるのだから。


そこから飛び出し、想いを伝えられるのは、なんて強い。


そんな人間は星の数。けど、オレには藁科が最強だ。


『もしさー、卒業まで何もなかったら、ゲンちゃんは、どうしてた?』


酒の席で白鳥先生に尋ねられた。


多分、どこかで好きだとは気付いただろう。けど、先があったなんて言いきれない。


本当の心を見ないようにしてきた日々を、終わりが近づいてきていたとして、オレは、手に入れようとしたかなんて……。


だってオレは、片想いに酔いしれて、こんなにも満足してしまっているのだから。




唯一、一番の存在を想う、その夢心地な世界から、季節が三度変わっても、抜け出せないまま……。


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①ー7・消えない波紋
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