瞳が映す景色

気を紛らわせるために話題を変えると、藁科は少し不服そうだった。


「喋るより、もう一度寝たほうがいいですよっ」


「もう大丈夫だよ。――白鳥さん、今度会ったら面倒だろうな。感謝はしてるけど」


「お気に入り、って言ってました」


藁科がオレを指す。そんな話、いつしていたんだろうか。……にしても、お気に入りとは、人形じゃああるまいし。


「澤……」


「美月ちゃん?」


「……には、ひと蹴りじゃ済まなそうだ。クリスマスもすっげえ怖かったんだ」


「大丈夫です。そんな心配するくらいなら、やっぱり休んでください。それか、食事しますか? 飲みたいものとかありますか? してほしいこと、ありますか?」


ぐいと身を乗り出して訊いてくれる。さらりと、長い黒髪がベッドに流れ落ちる。


「っ、ありがとう。大丈夫だから」


だから……。


「――もっと、甘えてくれてもいいのに」


そう言って、たまらなく可愛らしく、藁科は小首を傾げる。さっきよりも距離は縮まり、オレの熱を測ろうとした。

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