瞳が映す景色

②ー2・I am ashamed to say that

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②ー2・I am ashamed to say that
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「…………僕は、一から修行の日々を送ることにするよ」


それは十一月初旬、いつもの閉店近い夜のこと。これまた憂いある表情とは裏腹に、注文の品、低カロリー弁当をいつものささやかな店頭のテーブルで平らげたあとに発せられた一言。


あたしは、備品の補充をする片手間で適当に相槌を打つ。


「――確か、白鳥さんが死んじゃうまであと二年?もう一年になりましたか?」


確か、それくらいだったと思う。


「二年、だね」


「そっかそっか。なら馬車馬にならなきゃ。今から一からじゃあ、修行完了しないと思う」


「ああ……安らげない……」


「……」


あたしが視線を送る先には、自称『三十歳で死ぬ運命』の男、白鳥誠一、二十八歳、高校教師が嘘泣きをしている。


不治の病、大病を患っている訳じゃない。至って健康体。別に、女子が喜ぶ低カロリー弁当を選ぶ必要性も感じない均整のとれた肉体だ。


魔女と契約をしている訳でもない。誰かに刺される予告をされる程のことまではしでかしていない……と、これは推測と希望。


そう。これも所詮戯れ言。ただ白鳥さんが、なんとなく、漠然と、自分は三十歳になったら死んじゃう運命なんだと勝手に思ってるだけで。それが自然なんだと、ある日突然感じてしまったらしい。……中二くらいの頃。

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