瞳が映す景色

②ー3・あたしの きみの おすすめは?

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②ー3・あたしの きみの おすすめは?
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全身の毛穴から興奮冷めやらぬ二酸化炭素が抜けていく感覚。


独りだから叫びたいくらいの感動を誰とも分かち合えず、もういっそのこと、同じ空間に居た見知らぬ誰かを捕まえて語り合いたい衝動。


そういえば、隣の席のお姉さんは優しそうな人だった。同じ場面でハンカチを握っていたから、彼女も相当好きな人なんだろう。


というか、あの空間は、漏れなく熱狂的ファンで埋め尽くされていたに違いないし。


場所は自宅から一時間半以上離れたところにあるシネコン。


シネコンなんてあちらこちらに乱立するようになっている今、もっと近場にだってあるにはあるのだけど。


今回は駄目だ。今日この日はこのシネコンに勇んで来るしか選択肢がなかった。


観賞前に購入して、やっと今ページを捲った映画のパンフレットを眺めるために、邪魔にならない館内の片隅で壁にもたれ掛かる。


さっきまで観ていた映画の世界がより深く広がる内容のパンフレットは、熟読すれば途端にまた涙してしまいそうで、あたしはパタンとそれを閉じた。


今日は、原作小説が大ファンの映画を初日で観に来た。


原作は七章に分かれた物語。なんと映画は、そのまま七章を分割して上映としたもので、今回はそれの第四章だった。


映画は映画なりの作り方になっていても、内容さえ満足できればいいあたしだったけど、この作品は原作を本当に忠実に作り込んでくれていて、それは四章になってもクオリティは保たれたまま。

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