瞳が映す景色

真剣に解決法を模索する白鳥さんは、けど友達がいない白鳥さんだから、何の道も開けそうもない。


「ふふっ」


思わず吹き出してしまうと、それに気分を害された様子も一切なく、白鳥さんは明るく軽く、言い放つ。


「友達とのことは、――そうだなあ。僕には全く解決法を思いつかないけど、ちっちゃい子を見かけたら拉致って引き合わせることなら出来るかな。あとは頑張ってね~」


清々しいほどに自分には無理だと匙を投げられてしまった。


「――うん。じゃあ、謝れないままだったら、いつかそうしてもらっちゃおっかな」


「逆でもいいよ~。ちっちゃい子の住所とか教えてくれたら、逆に拉致ってってあげるから」


「それはいらない」


「わあっ。優しさを蔑ろにされた~」




少しは心配していた白鳥さんとのいつもの空間は、ほら、大丈夫で。


むしろ、認めてしまった今のほうが楽で。


ちゃんと話せてる。


ちゃんと、愛しく想うよ。むしろ穏やかにも。


こんなあたしを、判断してほしかったな。




魚を皮まで綺麗に平らげ、いつもと変わらない流れで白鳥さんは空容器をゴミ箱に捨てる。勿体無いなと言いながら。


「今日もごちそうさまでした」


「いつもお買い上げありがとうございます」


いつもと変わらず手を振り、マンションへ帰っていく白鳥さんが、今日は一度振り返る。


「――髪、短いのも似合ってるね」


こいつにだけは言われたくないなと感じる男を、あたしは愛しく想う。


「ありがと」


「なんだか、今日ちゃんと笑えてて安心した。ずっと、違ったから」


気付かれたことに、また想いは募る。


「そう?」


「うん」


昨日までの息苦しさは確かになくなり、代わりに新たに気を付けなければいけないことは出来たし、悩みは尽きないけど――


「――そう。なら、良かった」









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②ー7・嘘 嘘
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