瞳が映す景色

②ー8・閑話休題的、忠犬白鳥捕物帖

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②ー8・閑話休題的、忠犬白鳥捕物帖
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十月のとある日のこと。


……、あれ? 撃ち落とした遠くの獲物を主人まで運んでくるのは犬だったけ? 狩猟犬って、いたよね。


ただ、決して、大切な親友をあたしは撃ち落としてはいないし、捕ってこいと命令した覚えもないんだけど……。


狩猟犬ではなく、室内飼いのゴールデンレトリバーみたいだと、手を振りながらこちらに走ってくる様子を眺めて、あたしは呆れていた。




――


珍しく、最寄り駅から予め電話注文をしてきた白鳥さんは、これまた珍しくテイクアウトの旨も伝えてきていた。


閉店時刻間近、遠くから小走りで店頭へと向かってくる白鳥さん。


「えっ?――なん、で」


の後ろには、小さな影が引きずられるみたいに付随していて。その姿は白鳥さんより遅れて認識する。


戸惑うあたしは想定内だったんだろう。白鳥さんは、間に合ったと肩を上下させて安心したあと、自分のじゃない鞄をようやく手から放す。人質だったみたいだ。


「はいっ。強引でごめんね。お詫びにもう一枚」


「いいっ、要りませんっ!!」


付随していた小さな影は菜々で。でもなんで菜々が白鳥さんと? なんでその手に二枚の板チョコを握らされてるの?


訳がわからないまま、久しぶりに対面する菜々とあたしは、上手く視線を通わせ合えないままでお互いに下を向いてしまった。


「お弁当、出来てる?」


俯く先のカウンターに、ハンバーグ弁当分の料金が置かれる。


「っ!! ああっ、はいっ」


慌ててお弁当の入ったビニール袋を渡すあたしの顔は、きっと疑問符ばかりだったに違いない。


勿論応じてみせようと、白鳥さんは誉めろとばかりに胸を張った。


「駅前で見かけたから、拉致って来ちゃった」

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