瞳が映す景色
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「えっ……風邪?」
翌日の夜。今日はバイトはお休みして出掛けて帰ってきたばかりな中、食卓では、家族全員があたしに頷いてきて肯定する。
患っているのは家族ではなく、どうやら、向かいのマンションに住む白鳥さんのようだ。
だから昨日言ったのに。薄着だって。
「小町、あの人と友達だろ。一人飯の宅配はやってねえけど、友達ならと特別に了承しておいてやった」
届けてやれと、病人食じゃない幕の内弁当が玄関先に置かれてて。本人からの注文らしい。
「ちょっ、そんな勝手にっ」
馬鹿ばっかりじゃあなかろうか……大切だろう妹を、独り暮らしの男性宅に軽々と送り込もうとする兄も、見守る家族も。
……案の定、易々と風邪で寝込んでしまう白鳥さんも……。
「高熱で襲ってくる危険もないだろうし、食料は尽きたらしいから餓死する前に行ってこい」
「おっ!? 馬鹿じゃないのっ!! だったらお兄ちゃんが行ってこいっ」
「仕事あるから被害を被りたくないな」
「小町、一時間以内なら許すからその間に懐柔してらっしゃい」
「……お母さん……」
いい家族だとは思う。けど、馬鹿ばっかりで、娘のあたしもそれだと、諦めた。
あんな幕の内なんて大風邪で食べられるんだろうか――念のため、家にあったレトルトのお粥、スポーツドリンク、風邪薬も用意する。
「あっ、そうだっ」
これもあったほうが絶対にいいだろうと氷枕も持って行くため冷凍庫を開けると、そこには、昨日白鳥さんから貰ったクリスマスケーキが置かれていた。あたしが、そうしたんだけど。
食べるかして消してしまえばいいのだ。けど思い切れず行き場のないケーキは、あたしそのもの。
見ないふりをして、その扉を勢いよく閉めた。