瞳が映す景色
携帯電話を握っていた白鳥さんは、まだ話し中だったのか通話部分を手で押さえていて、慌ててあたしは口を閉じる。
こちらに背を向けて一言二言喋ったあと、
「じゃあね、――藁科」
とても労りある声で、白鳥さんは別れを告げていた。
「……」
「へへっ。ちょっと過干渉だったかも」
「――、大丈夫、だよ」
「うん。そっか」
もっと早く帰って来られたら注文出来たんだけど、と白鳥さんはお腹を押さえる。
「チキンだけは食べられたんだけど、若いパワーに負けて他はあんまり」
だから、途中でケーキを売っていたから買ってきたらしい。
「ご飯ものじゃないんだ」
「バイトの売り子さんがね、売り切らないと帰れないって震えてたから。――だから二つ買っちゃった。一つあげる」
気づけばずっとしゃがみこんだままで会話をしていた。あたしの頭頂部には、おひとりさまサイズのクリスマスケーキの箱が白鳥さんによって置かれてて。
「えっ……でも、お腹空いてるんだったら二つとも」
「胸焼けしちゃうよ~。勢いで買ったけど困ってたんだ。居てくれて、助かった」
昼間のスノードームと同じようなことを言われ、あたしも同じ返しをしてしまい、ケーキを受け取る。
「じゃあ、仕方ないかな」
本当に寒いと色を無くした唇を震わせながら、白鳥さんはそそくさと帰っていった。
……ああ。神様。あたしは全然、いい子になれていない。あなたが嘆く汚い筆頭です。
白鳥さんが、もう人妻だろうが誰であろうが、平穏に幸せになってほしいと、思ってます。
けど、それはあたしじゃなくて。あたしなわけはなくて。
けど、クリスマスの過ごし方に安堵してみたり、独り占めできた時間やあれこれに浸る。忘れられるまでとしながら新たな思い出を幾つも作る。
帰ってくる白鳥さんに会えるかもと、わざとゆっくり外にいたことを……今さら自覚した。
あたしはいったい、何がしたいんだろう。