瞳が映す景色

②ー13・Fall

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②ー13・Fall
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翌週末のこと。


時刻は夜の八時。


今日は半日新しい傘を選んでいた。一本きちんとした、それなりに値段のするものを持っておけば、そこかしこで忘れたり、ビニール傘をコンビニで買い漁る行動を制限出来るのではという友達に付き合っていたのだ。


あたしも、どうせならと一本購入。ベージュ地の、縁取り付近に黒猫が鞠を追いかける模様が控え目にある傘。友達に黒猫はどうかと言われたけど可愛かったから問題ない。


まだまだ雨の多い季節。活躍の場は期待出来て楽しみで。


三十分ほど電車に揺られたあと、最寄り駅のホームに降りる。見上げると、今日は一日中曇天だった、星の瞬かない夜空がそこにある。


傘の出番を楽しみにしつつ、明日も降らないといいなと思いながら階段を上がった。




「あっ」


「おかえり~」


改札の外であたしに向かって手を振る人は、――せ、先週からお付き合いを始めた白鳥さんで。


思わずの顔にぎこちなく近付くと、傘の他にも買い物をしてきた紙袋をさりげなく預かろうとしてくれる。


「っ、あたし自分で持つからっ」


「ん、重くない?」


「これで重かったら、あたしはどれだけか弱いんですかという質量だよ」


あっさりと引き下がってくれた白鳥さんから奪い返した紙袋の中身は、友達と選んだ、浮かれすぎない程度に可愛く見えたらいいなという類いの洋服一式で、だから余計に恥ずかしい。


あたしたちの近くにいた、他校ではあったけど女子高生の、白鳥さんを明け透けに見上げる視線にいたたまれなくなり、帰路へと誘う。


「白鳥さんもお出掛けだったの?」


「午前中だけね。もう着くって連絡返してくれたから、お迎えだよ」


「っ」


その甘やかされかたに、あたしは右足を連続で前に出してしまいそうになった。

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