瞳が映す景色

①ー5・冷たい刃

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①ー5・冷たい刃
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「片山先生のこと、好きです」


ふたりきりの教科準備室で、オレは、ゆっくりと相手に振り返る。


夏の終わりから何度も耳にした。けど、どれだけ回数を重ねても慣れることのないそれ。


だが、今日はいつもと違う。


振り返った先の人物が藁科でないという、大きな箇所が。


もっと違う状況で訪れてほしかったが、人生で三度あると噂されているモテ期とかいうやつなのか？　……いや違うだろう。卒業が近くなると起こる恒例行事に巻き込まれているだけだ。


「申し訳ないが、それに応えることは出来ない」


「……なんで？」


「君は、当然だが生徒のひとりでしかなく、そして、生徒でなくても、好きになることないから」


逡巡ののち、


「……分かりました」


ひとこと、小さな了承だった。

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