瞳が映す景色

……


生徒指導室で、教師であるオレは問い詰められていた。机の下で握った拳は、爪が食い込み汗が滲んで気持ちが悪い。出入り口の廊下側には面談中の知らせが出してあって、誰かが間違えて入ってくることがないのは、はたして救いなのか絶体絶命なのか、もうオレの追い詰められた頭じゃ判断がつかない。


部屋に入ったと同時に付けられた暖房が、心苦しい。窓の外からは、生徒の寒さを訴える大きな声が響いてきていた。


「詳細を。私情を挟まず簡潔に説明して下さい」


机を挟みオレの正面に座るのは、年配の、けれどいつも若々しい学年主任。


「決して、事実ではありません」


「片山先生のことは信じています。ですが、何か――あの子に嘘をつかせる出来事があったのではないですか? わたしとしては、そこを解決しないとと考えます」


……、あった。


真摯に対応したはずだったが、足りないところだらけのオレだから、もっと方法はあったかもしれないことが悔やまれる。


オレの不甲斐無さはいいが、あの出来事を言ってしまうのは、女性徒にとって、もっと泣いてしまうことにはならないだろうか。


「っ、それは……」


「失礼します」


どう答えていいかわからないまま開いた口が何かを紡ごうとしたと同時に、ノックの音がした。


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