私が好きなのはキミだけだから。
そして始業式後のHRが終わった後、教室がまだにぎやかなうちに
「入江くん、少し話があるんだけど……来てもらえないかな?」
と小声で声をかけた
入江くんは一瞬目を伏せ、切なそうな顔をした後、「わかった」と言って席を立った
きっと、私が何を言おうか分かっているんだ
私は今から入江くんを傷つけてしまう
私に優しく微笑んでくれたのに……
さっき気持ちを固めたはずなのに、それが揺らいでしまう
そう思って、私はふるふると頭を振って、気持ちを立て直した
そのままドアへ歩き出そうとしたときに感じた一つの視線
「な、つめ………」
棗は、私の隣の席からこちらを見つめていて、その顔はあまりにも切なかった
そんな顔をさせているのは私だと思うと、またしても胸が痛む
隣の席だというのに、今日は一度も話すことはもちろん、目を見ることもなかったから気づかなかったけど、唇の左端に絆創膏を貼っていた
"大丈夫?"
そう声をかけたくても、今の私にはまだ許されない
あと少しの我慢だと自分に言い聞かせ、私は棗から目をそらして教室から出た