恐怖の友達
龍二は真剣な顔で一点を見つめていた。
その目の先には写真の中で力強く微笑む祖父の顔があった。
38歳の高齢で父を授かり、大いに喜んでいたのに消えた祖父に会えるかも知れない。
いや、会うんだ。会って父の成長した姿の家族写真を見せたい。
龍二の瞳に決意の光が満ちた。
その決意の光が、爆発したように燃え上がった。
そうだ。林檎ちゃんもこのホテルに連れてこられているかも知れない。
林檎ちゃんに会える。
いや、会う。そして祖父にも会う。
龍二の目標が定まる。
「オラが怖いだか? ごめんな。すぐに帰るだから安心してくれ」
ゴンザレスは恐ろしい顔を少しは愛嬌よくしようと笑顔を作った。
だが、悲しい事に笑うと余計に怖い顔になっていた。
「ゴンザレスさん。あなたは怖くないですよ。料理を運んでくれてありがとうございました」
といって天使のような顔で微笑む龍二。
それにすっかり気を良くしたゴンザレス。
更に不気味な笑顔を。
いや、彼にしたらこれが満面の笑みなのだろう。
そして、替えの扉を持って来るといい、走り去った。
龍二は一人ため息をついてスプーンを手にしコーンスープを口に運んだ。
武士は食わねば戦は出来ぬ。
今は食べる事だ。
龍二は熱心に食べて栄養を蓄えた。
今食べている物が誰の肉とも知らずに。
何のではない。“誰の”である。
愛しい人の肉かも知れない。
ここはそういう場所。
人間の恐怖や悲しみ憎悪や罪悪、嫉妬に肉欲それがこのホテルの存在を助長する糧となる。