恐怖の友達
「可哀想に……誰がこんな事を……」
龍二はボーリングの球の大きさのドアの穴から落ちた首に近づく。
「可哀想? 誰が?」
「誰だ!?」
床から声が聞こえた。
まさか……うわ!
そんな馬鹿な……。
龍二の顔が寝たきりの病人のように青ざめる。
当然だろう。落ちた首が話しているのだ。
本来あり得る筈がないのだ。
あり得ない事があり得る。
それがここである。常識は簡単に覆し、代わりに非常識が支配する。
「お前たち」
「え?」
女の生首に向かい龍二が問いかける。
「お前たちが私をこうした。罪を悔い改めろ!」
ゴロリ。とまた首が転がる。ゴロン。ゴロン。ゴロロロ!
勢いを増した首は激しく転がり、龍二は慌てて飛び避けた。
「クチャクチャ、ゴクン。お前の肉は美味しい。もっと食べたいななぁ。食べたいな!」
龍二は飛んだが、首も追って飛んだ。
アゴの力を使い弾丸のように。
そして回避しきれず、龍二の足の肉を食いちぎられ、そして食べられた。
龍二のスネには骨が見えていた。
龍二の黄金の右足は死んだも同然。
空手を愛する高校生の武器が失われた。
もう生き残るすべはない。
