あの頃のキミはもういない
「ま、雅也……君?」

何故かそこには怖い顔をしている雅也君の姿が。


「何?勝手にしろって言ってたよな?」

「うるせぇ。良いから早くそいつから離れろ」

「クスッ何今更かっこつけてんだよ」

そう言って男の人は私を抱きしめ……



「なっ!?」

唇に柔らかい感触……

これは……

キ、キスゥ!?


「て、てめぇ!」

「何?あんたこの子とは何の関係もないんでしょ?だったら俺が愛奈に何しようと自由じゃん」


「て、てめぇ呼び捨て」

雅也君が何か言おうとした時、男の人は雅也君の耳に口を近づけ、何か言って去って行った。

その時、雅也君が見たことないくらい目を見開いて、顔を真っ青にしていたのを私は見逃さなかった。


「ま、雅也く「その名前で呼ぶな」

「雅也君」て呼ぼうとしたら雅也君が冷たく言い放った。


「俺はただ通りかかって助けただけ。勘違いすんな」


嘘……
嘘だよ……
だってさっき、すごく怒った顔してたじゃん。

幼稚園の時、私がからかわれて雅也君が助けてくれた時と同じ顔だったよ……?

なのに……なのに……どうして嘘つくの?


「とにかく、早く帰れ」

雅也君はそう言って、去って行った。


どうして……

ー「愛奈、大丈夫?」
「うん!雅也君が助けてくれたから!」ー

あの頃は私達、普通に話してたじゃん。

今は「大丈夫?」の一言も言ってくれない。

どうして……?
どうして私達こうなっちゃったの……?
そうやって心に問いかけても誰も返事なんてしてくれない。


やっぱり……やっぱり私、無理だよ……。

ー「悲しい時はこれを見ろ!」ー

貴方を……雅也君を諦めるなんて……無理だよ。

私はそのままその場に泣き崩れた。

町行く人々が私を見て何やらこそこそ話している。

でもそんなの今は気にしてらんない。

流れる涙とともに、雅也君に対する溢れる想いを抑えるのに精一杯だった。
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