シンデレラを捕まえて
「ダ、ダメ、でしょう……」

「なにがどうダメ? 美羽さんは俺の事嫌?」

「嫌じゃ、ないけど」


こめかみに穂波くんの吐息がかかる。掴まれた手首はじっとりと汗ばんでいた。


「だけど、だって、それは、よくないよ。だって、穂波くん、私のことよく知らないんだよ……?」


知る、知らないが今この時点でどれだけ大事なのかと言われたら、多分大事じゃない。
穂波くんは私を欲しいと言ってくれている。
私は、それを嬉しいと思ってしまっている。

だけど、ここで穂波くんとあっさりと体を重ねてしまってもいいのかとも、思う。


「あの夜だって、穂波くんがどうして私にあんなに優しくしてくれたのか分かんない。そこまでさせる何かって、なに?」


穂波くんが私に構ってくれる理由って、なに? 無償だって思えるほど、私は私の魅力を知らない。こんなに求められるほどものが、どこにあるの?
穂波くんを見上げれば、彼は私の首筋に手を寄せた。白いカッターシャツの襟にすっと入った指先が肌に触れ、びくりと体が震えた。


「……これ」


穂波くんの指先が摘み上げたのは、私の首元にあったネックレスだった。


「これ、△△町のセレクトショップで買ったでしょ」

「え?」

「駅前通りのoranginaって店。だよね?」


おずおずと頷いた。それは、大学生時代の私のお気に入りのお店だったのだ。


「どうしてわかるの?」

「これさ、俺が高校の時に初めて作って、卸したアクセサリーなんだ。これ作ったの、俺」

「うそ」

「嘘なんて言わないよ。これの作者は、俺」


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