仮
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幼稚園の祭で作った団扇。クレヨンで描き殴られた自由帖。
風呂上がりの髪を乾かしながら、私はダンボールの中身を床に拡げた。
(懐かしいなあ。あ、これ宝箱だ)
ダンボールの奥から出てきた、ピンクのプラスチックケースを取り上げる。
鍵付きのそれは、小さい頃の私にとって宝箱だった。
折り紙でも指輪でも、大切なものは、全てこの中にしまっていたのだ。
鍵を探して、開けてみる。
中には、記憶の通り、キラキラした指輪やブレスレットが詰まっていた。
きらきらしたカラフルな物が好きだったんだな。
昔の自分を思い出して、顔が綻ぶ。
しかし中を探っていると、ひとつだけ異質なものが入っていることに気づいた。
(なんだろこれ。真っ黒……)
取り出してみると、それは、ツヤのある羽だった。
(これって!)
忘れていた記憶が、断片的に蘇えってくる。
9年前、私がまだこの街に住んでいた頃。
小学校の裏山で迷子になった私を助けてくれた人からもらったものだ。
その人は、別れるのが嫌だという私に、背中の羽をちぎって渡してくれたのだ。
(背中の羽?)
有り得ない記憶に首をかしげる。古い記憶だし、何かの映画と混合しているのだろうか。
羽をくれた人は、どんな人だっただろう。
そもそも、私は何故裏山に入ったんだっけ。
細かい事を思い出そうとするが、なかなか思い出せない。
そうこうしている内に、すっかり時間が経っていたようで、気づけば、日付が変わってしまっていた。
(もう、寝なきゃ)
私は、不思議な気持ちを抱いたまま、何か思い出せればと羽を枕元に置いて目を閉じたのだった。