ささくれとレモネード
第3章:淡く色づく




いつもより十分早く学校に着き、教室に荷物を置いて職員室へ向かった。


特定の場所にある日誌とプリント、それから授業変更の有無を確認して、もう一度教室へと向かう。



8時手前の教室には、まだまだ人はまばらだ。


澄んだ気分で朝を迎えられるので、榛名はこの時間が好きだった。



窓際後ろから二番目の席について、日誌をぱらぱらと開く。



5月某日。天気の欄には太陽のマークを記す。


見開き左のページはまっさらで、補助欄に朱色で書かれた文章がやけに目立っていた。


欠席した彼女を心配する担任の文章を読んで、榛名は右ページの補助欄にその返事を綴った。


名前の欄にもさらさらとペンを走らせる。



「”榛名”って、そう書くのか」


頭上から降ってきた声に、榛名は手を止めた。


見上げたところで榛名の大きな目が、一段と見開かれる。


驚いた彼女を、三日月形の唇が満足そうに笑った。


そうして前の席に腰掛けたのは、三浦だ。


「なんで、って顔してるな」


暫く固まった顔の筋肉を慌てて動かす。


図星だった。


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