ささくれとレモネード



「昨日、休みだったろ」


「なんで知ってるの」


「体育の時間、居なかったから」


「ああ、そうか、そうだったね」


榛名は視線を落とした。どこまで書いていたか、日誌を探る目が忙しない。


不自然なその動きをなぞるように、三浦は日誌を見つめた。


丸みを帯びたひらがなと、細身ですっきりとした漢字が綺麗に羅列している。


「北村って、習字とかやってた?」


榛名の肩が大きく震えた。


「どうして、」


やけに小さな声が返ってくる。覗き込まない限り、その表情は見えそうに無かった。



「綺麗だよ、字が。ほら。名前も形が取り難そうなのに」



今度は返事が返ってこない。


耳にかかっていた髪がさらさらと落ちたのを、陽の光が栗色に透かしている。


三浦はその様子にぼんやりと焦点を当てる。どうも様子がおかしい。


「まだ、具合悪いのか?」



呟いたその声にようやく榛名は顔を上げた。


「ううん、大丈夫」


そう言った顔が、一瞬唇を噛み締めていたのを三浦は見逃さなかった。


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