大罪
「悪魔とて、均衡の為には必要なのかもしれないよ?」
ミューが笑む。
「また、その戯言か。」
陸奥は不快感を顕にする。
「どちらが神で悪かなんて、所詮は決めつけ。両者があってこの世界は今の形でいられる。……悪魔が居ない世界に神の意味はないからね。」
「その戯れは不愉快だ。」
「ふふっ。そうだね。でも、撤回はしないよ?」
ミューに陸奥はそっぽを向いた。
そうして、静寂が支配する。
タナトスは目を細めて、考え始めた。
解りきった話だ。
“許しを得ればいいのに”
ゼロの視線が脳裏を過る。
僅かに宙に浮いている足を見る。
ひやり、とした感触と、無数の骸が足を掴んだ。
“ユルシハシナイ”
そう言う声さえ聞こえる。
声を上げずに、目を閉じた。
再び目を開け、レイを見る。
(許されざる罪人の器……)
本来、器とは神の使いの為にある。
許された使いを生かすためのものだ。
罪人には必要ない。
——神は魂に力を注ぐ。
神が使いに力を与えるとき、半分は器に分け与える。
器が死んだ時、その魂から力を回収し、別の魂に移し替える。
そうして、力を持つ者が居ない状況が無いようにした。
“死”の席が空席だったのは、それで均衡が事足りたからだ。
再構築した日、初めにゼロが構築され、全ての構築を終えた時にタナトスが生まれた。
正確には、タナトスは胎児の時に死んでしまった魂だ。
言い伝えられる事とは違い、生まれる前に死んだ罪人である。
罪状は親が人殺しだったから。
数え切れない程の人間を殺した親の罪。
神も理不尽だと思った。
他人の罪なのだから、償う必要はない。
けれど、タナトスは言った。
『我が主。どうか、私に罰を下さい。どうか、どうか。』
切なる願いだ。
きっと、誰からも望まれなかったのだろう。
故に、自分を罪人だと思ったのだろう。
どんな言葉も救いにはならなかった。
唯、罰だけが彼女を救えた。
神は許し、力を与えた。
死を司る者として、仕えさせた。
タナトスを気にかけたこともあったが、死を司る者も必要だとその時感じたからだ。
『仕えさせてくれることは嬉しいわ。けれど、許されることは私には必要ない。』
そう言うと、許しの証を神に返した。
『己の屍を背負い、全てを送る。それが、お似合いよ。』
そう言って、馴れ合わず、命令に従った。
足に絡まる骸を見下ろした。
ミューが笑む。
「また、その戯言か。」
陸奥は不快感を顕にする。
「どちらが神で悪かなんて、所詮は決めつけ。両者があってこの世界は今の形でいられる。……悪魔が居ない世界に神の意味はないからね。」
「その戯れは不愉快だ。」
「ふふっ。そうだね。でも、撤回はしないよ?」
ミューに陸奥はそっぽを向いた。
そうして、静寂が支配する。
タナトスは目を細めて、考え始めた。
解りきった話だ。
“許しを得ればいいのに”
ゼロの視線が脳裏を過る。
僅かに宙に浮いている足を見る。
ひやり、とした感触と、無数の骸が足を掴んだ。
“ユルシハシナイ”
そう言う声さえ聞こえる。
声を上げずに、目を閉じた。
再び目を開け、レイを見る。
(許されざる罪人の器……)
本来、器とは神の使いの為にある。
許された使いを生かすためのものだ。
罪人には必要ない。
——神は魂に力を注ぐ。
神が使いに力を与えるとき、半分は器に分け与える。
器が死んだ時、その魂から力を回収し、別の魂に移し替える。
そうして、力を持つ者が居ない状況が無いようにした。
“死”の席が空席だったのは、それで均衡が事足りたからだ。
再構築した日、初めにゼロが構築され、全ての構築を終えた時にタナトスが生まれた。
正確には、タナトスは胎児の時に死んでしまった魂だ。
言い伝えられる事とは違い、生まれる前に死んだ罪人である。
罪状は親が人殺しだったから。
数え切れない程の人間を殺した親の罪。
神も理不尽だと思った。
他人の罪なのだから、償う必要はない。
けれど、タナトスは言った。
『我が主。どうか、私に罰を下さい。どうか、どうか。』
切なる願いだ。
きっと、誰からも望まれなかったのだろう。
故に、自分を罪人だと思ったのだろう。
どんな言葉も救いにはならなかった。
唯、罰だけが彼女を救えた。
神は許し、力を与えた。
死を司る者として、仕えさせた。
タナトスを気にかけたこともあったが、死を司る者も必要だとその時感じたからだ。
『仕えさせてくれることは嬉しいわ。けれど、許されることは私には必要ない。』
そう言うと、許しの証を神に返した。
『己の屍を背負い、全てを送る。それが、お似合いよ。』
そう言って、馴れ合わず、命令に従った。
足に絡まる骸を見下ろした。