大罪
ゼロの方を見て笑った。
「良いって言ってるなら、いいんじゃあないかぁ〜?」
そう言ったのは位置から察するにベルフェゴールだ。
欠伸をしながらやる気がなさそうにしている。
「そうそう。慈悲のゼロちゃん♪」
嫌味を込めてマンモンの位置の人物が言う。
「さぁ、行っておいで。」
神は指先で魂を送った。

器から光が放たれ、神の元へ抱かれる。

そして、それぞれの罪人は光となった。

宝石のように砕け、舞い上がり、神の元へいく。

それはこの世で無いくらい美しい。

「タナトス。」
不意に光がタナトスを包んだ。
本来ならば、許されないものは灰となり消えるはずだ。
魂の輪廻から外れ、忘れられる。
「何?」
振り返ると、ゼロが居た。
「ごめんね。」
そう言うと、リボンを外し、タナトスに付ける。
「なっ……!」
許しの証を外すことは許されないものとして死ぬことだ。
「じゃあね。」
ゼロは光となった。
「待って……!」
タナトスは手を伸ばすも、他の罪人のように光となった。

「ゼロ。」
神は呼ぶ。
「はい。」
光が応えた。
「許しの譲渡は本来許可されない。」
「それでも、私はタナトスを生かしたいの。」
「……そう、すると思っていた。」
神は十字架を見る。
「あの器は唯の人間として地上へ降ろす。そして、汝を許されないものとして輪廻から外す。」
「うん。」
優しくそう返答する。
「そう言いたいところだが、汝には生死の天秤としての義務がある。」
神はそう言うと溜め息混じりに言った。
「それに、本来タナトスは許しを得ている筈のものだ。」
そして、指で導く。
「汝を姿無き番人とする。」
「番人?」
「我の傍で共に此処を守る番人だ。あの件のように我が監視できぬ場合もある故。」
光の玉が神の傍で回る。
神にはゼロの姿に見えているようだ。
「その代わり、他のものには何人も見えない。そして、何一つ見る以外出来ない。詠唱も生かすこともならない。」
「わかった。」
ゼロは頷く。
「故に我以外のものには“輪廻から外れた”ことにしている。」
「うん。」
そう言うと他の光を見る。
「じゃあ、ミュー……あの器は」
「人間として生きるだけだ。」
神は十字架に触れて、地上へ帰す。

そして、光を送った。

それぞれ、大罪人は構築され、器は在るべき場所へ還った。

タナトスは呆然とする。
「どう、して……」
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