大罪
ぜぇぜぇと喘鳴が耳障りだ。
苦しみが消えない。
「我の力にあてられているようだな。」
そう言ってタナトスの胸に手を置く。
黒い光が溢れ、宝石となり結晶化した。
「悪魔、か。」
神が宝石を握り潰すと霧散する。
息苦しさが消えたタナトスはバツが悪そうにしている。
「——天空宮、六番地。“レヴィアタン”と“アスモデウス”が諍う。理由は統治問題。諍い中に歪みが発生。本来、罪人同士が諍うと神によって仲裁される筈が、別の歪みによって発見が遅れた。その歪みは地獄界から起こっているもので、三番地などの地方にも起こっている模様。始まりは悪魔の力が四散した時と見られる。歪んだ原因はその力。神は対策として、人間界への扉の封鎖・天空宮の見回りの徹底をした。」
ゼロが報告したことを言う。
「と、あの子は言っていたわ。なのに、どうしてこんなところに?」
「歪みは大方修復できた。」
神は言う。
「だが、罪人を今一度器と共に集める必要がある。」
「どうして?」
タナトスは眉を寄せる。
「修復したとはいえ、脆いことは確かだ。だから、もう一度力を分けなおす。そして、空間の均衡を保つ。」
「そう。」
神にタナトスは頷く。
「つまり、それぞれを再構築するのね。」
「あぁ。」
神は淡白に応えた。
「許しを」
「お断りよ。」
「……そうか。」
許しを拒むタナトスに神は言った。
「では、始めようか。」
神は天に手を翳す。
そして、この世のものとは思えない声色で謳う。

——全ての罪よ洗い流せ

粛清と救済を

生きとし生けるものへ

死せるものへ

万物よ、我に集え

すると、光が降り注ぎ、9つに分かれた。

光は人型となり、罪人へと姿を変えた。

傲慢の大罪人ルシファー

嫉妬の大罪人レヴィアタン

憤怒の大罪人サタン

怠惰の大罪人ベルフェゴール

強欲の大罪人マンモン

暴食の大罪人ベルゼブブ

色欲の大罪人アスモデウス

そして、生の大罪人ゼロ。

タナトスは光の方に歩み寄り、位置についた。

背後には十字架に蔦で拘束された器が眠っている。
(強制送還か。)
タナトスは神の力の大きさに驚いた。
「これより、再構築を行う。」
神が手を翳す。
「待って!」
ゼロはタナトスの方を見た。
「そしたら、タナトスは……」
「私は良いわ。」
タナトスは言う。
「化けてでも貴方を殺すから。」
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