当て馬ならし

第三話 当て馬兆し

用を足して手を洗っていると、
あからさまに顔色の悪い
小柄な女性が駆け込んできた。

鏡越しでわかるほど
青い顔をして個室にはいってく。

花嫁候補であるのだろうか・・・
黒いドレスの上に
緑のローブをまとって
髪はあまりセットしたと思えない
感じで垂らしてあった。

トラブル回避の為に
他の姫にはかかわらない方がいい
と思いながら気になって
個室の中を何気なく伺うと・・・

「うぅ・・・ひっく・・・
 私なんかが・・・ひっく・・・」
という泣き声が聞こえる
緊張のあまり失敗したか、
もしくは押し寄せる緊張で
不安に押しつぶされたか・・・

「もう・・・だめだ・・・
 帰ろう・・・とても会うなんて
 ・・無理・・・」
泣きながら呟かれる言葉

はぁ・・・こういうのなんか
イライラするのよね。
やらかしちゃったらもう、
素直に帰れって思うけど
会う前から帰るってどういうこと?
用意してもらった最高の気遣いとおもてなし
背負うものもあってここまできたのだろう
それが、土壇場になって
自分の弱さに負けて
他人に迷惑をかける
そいうの、
なんていうか私は耐えられない。

臆病になる乙女以前の問題でしょ?
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