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そこには、10年ぶりに会う和馬(かずま)が立っていた。

和馬はすっかり大人になっていたけれど、それでもサラサラの髪や、眼鏡越しの穏やかな瞳、整った顔立ちは少しも変わっていなかった。

「和馬?……すごく、久しぶりだね」

「うん、ほんとに久しぶり」

私を「ハル」と呼ぶのは和馬だけだ。

ハル、と呼んだ和馬の声は、昔の写真のようなやんわりした感触ではなく、一瞬で10年の時を巻き戻す力があった。
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