【短編】紅蓮=その愛のかたち
2
それから、三年の後。
ようやく、ナホミに新しい彼が出来た。


「カナメ・マサユキ」という。
新進の料理写真家で、フリーで活躍している。

業界ではその名前も通り始めていた。


フードコーディネータをしているナホミとは、あるCMの仕事で知り合った。


「もっと、こう・・・『シズル感』、出ねぇかなぁ~。あんた、プロだろ?」


カメラを覗き込みながら、カナメが舌打ちをするように言う。


そして、カメラから顔を上げて、ナホミを見るなり、驚いた様子で口をあんぐり開けている。


二人は、見つめ合うような格好になった。


「あんたが・・・・。あ、貴女がコーディネータさんで・す・か・・・」


「ええ、さっきご挨拶いたしましたけど」


不審げな声になる。


そういえば、挨拶している時に、カナメは今回の仕事のレジュメに目をやったままで「ヨロシク」と返事していたっけ。


なんて失礼な人なんだろう。ナホミはそう思っていた。


その彼が、今度は居住まいを正して、最敬礼しているではないか・・・。


仕事が終わって、その理由がわかった。


「あの、すみません。ボク、あの一目惚れしてしまいました。突然ですが、つきあってくださいませんか。」


そう、カナメが声をかけてきたからだ。


「ええ、友達からなら・・・」


そんな風に、カナメに押しきられる格好で、二人は、つきあい始めることになった。
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