ウェディングドレスと6月の雨
 日曜日、私は何をする訳でもなく、ぼんやりとアパートの部屋で空を眺めていた。青い空は光を放つように輝き、白い雲が浮かんでいる。早朝に花火が上がっていたから、どこかで運動会があるんだろう。喉の渇きを覚えて冷蔵庫から炭酸水のペットボトルを取り出した。蓋を開ける。グラスに注ぐとシュワリと音を立てた。

 穂積さんと神辺さんは別れていた。2人にはもう関係が無いと知った今、悩むことも無いのは分かっている。ましてや……。


 “気になる子が出来た、って”


 神辺さんの言葉、穂積さんからのメールにそう書いてあった、と。しかも返信には名指し、間違えようもない。嬉しいような、でも、喜んではいけないような。くすぐったいような、それでいて苦しい……。そんな気持ちに支配されていた。穂積さんに連絡して先日のことを詫びようか、言い掛かりを付けてごめんなさいと謝ろうか。どうしようか迷いながら、私はグラスの炭酸水を口に流し込んだ。シュワリ、シュワリ……。口の中も喉も焼けるように熱くなる。それをゴクリと飲み込んで、私はスマホを手にした。

 穂積さんにメールを送ろうと画面に触れた瞬間、スマホはブルリと震えて音をはじめとする鳴らした。着信……開いては穂積さん。心臓がバクバクする。どきどきする。この人はわたしを好きなんだろうかと思うと、異様に緊張した。


「もしもし、成瀬です」
「ああ。休日に悪い。先週の会議のことで。明日夕方は都合が悪くなったから、朝一番でいいか?」

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