ウェディングドレスと6月の雨
 一通り説明を終えて、私はふうと息を吐いた。

「コーヒー、飲むか?」
「はい」


 穂積さんは席を立ってキッチンに行く。


「この前はすみませんでした」
「いや」
「穂積さんに失礼なことを言った上に、仕事を放り出して」
「気にしなくていい。迷惑なことをして悪かった」
「迷惑なんかじゃ……」


 穂積さんはコーヒーメーカーにサラサラと粉を振り入れる。そしてビーカーで水を注ぐとスイッチを入れた。


「先日、本社に行ったんです。用事があったのは総務部だったんですけど、人事部とワンフロアで」
「ああ、そうだな」
「そしたらたまたま、神辺さんが赤ちゃんを連れて見えてて」
「そうか……」


 コーヒーメーカーがコポコポと音を立て始めた。穂積さんは右手を口元に当てて、目をキョロキョロさせていた。


「あの……?」
「いや、何でもない」


 何でもないと言いつつも穂積さんは指先をコーヒーメーカーに当ててトントンと鳴らして、挙動不審だった。


「別れたって聞きました」
「誰に」
「だから神辺さんに」

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