ウェディングドレスと6月の雨

 躊躇しているとメールが来た。午前11時、中途半端な時間。ドキドキしながらデスクの隅に置いたスマホをちらりと覗く。

 穂積さんからメール。名前だけで胸がきゅうっと締め付けられる。


“日曜日、決まってないなら公園いかないか?”


 公園デート。素朴でいい。顔が綻ぶ。


“公園いいですね。天気予報も晴れですし”

“10時頃迎えに行く。じゃあ”


「……」


 僅か5分で終了してしまったやり取り。お昼休みならゆっくりメールも打てるけど、今は仕事中。隣の社員に怪しまれない程度にしかスマホに触れない。それに穂積さんから来たメールは用件だけを済ませたいというオーラが漂っていて、長々と返事を書くのも憚られた。

< 193 / 246 >

この作品をシェア

pagetop