ウェディングドレスと6月の雨

 午後15時、会議室に向かう。会議は16時から。開錠して中に入るとむんわりした空気が肌を包む。私は会議室の照明をつけてエアコンのスイッチを押した。今日も穂積さんは定刻には来ないんだろうか。最後の会議なのに遅刻するんだろうか。テーブルを拭いてプロジェクターをセットする。持参した自分のパソコンと繋げて作動するか確認する。今日の会議も空気がピリピリするんだろう。

 諸々の準備をキチンと確認し終えたときには定刻10分前。慌てて席を立ち、給湯室に行き、飲み物の用意をする。部長はお茶、他のメンバーはコーヒー。湯呑み、カップ、スプーン。スティックシュガー、クリーム。バタバタしていると、後ろから声を掛けられた。


「僕がやるよ、成瀬さん」


 広報の高田さんだった。湧いたやかんの火を止めてポットに注いだ。


「何だか怪しいね」
「そうですね、もう雨も降り出してますし、雷で停電しないといいんですけど」
「僕が言ってるのは天気じゃなくて穂積。まだ来てないんだろ?」
「ええ……」


 私は答えを誤魔化すように急須に茶葉を振り入れた。高田さんが同期の穂積さんを良く思っていないのは分かっている。それは前回の会議での発言で皆も知っている。遅刻ばかりで愛想のない穂積さんより自分の方が適任だと自薦していたから。

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