ウェディングドレスと6月の雨
 そのとき、大きな音と地響きがした。窓ガラスも振動する。


「きゃあっ!」


 雷。突然の雷鳴に私は咄嗟に目をつむって頭を抱えてしゃがみこんだ。


「おいっ」


 カットソーの上から肩に触れる、温かいもの。多分、手。そっと置かれた手。私は頭を抱えていた自分の手をゆっくりと緩めた。


「大丈夫か?」


 すぐそばで聞こえる声。それは穂積さんの低い声。


「はい……」


 その声は近く、彼の息遣いさえ鼓膜に届いた。同時に聞こえるのは自分の脈。ドクドクドク、と雑音のように静かなオフィスをかき乱して。


「一応、女の子なんだな」
「え」
「雷が怖いとはな」


 クスクスという掠れた音が鼓膜をくすぐる。馬鹿にされたようで私はカッとなった。


「あのっ、私も女の子です。悪いですか? あの、や……」


 その笑い声の方向を見れば、目の前には穂積さんの顔。私の瞳をのぞき込む穂積さんの目。私は俯いた。


「だ……大丈夫です……」
「なら、いい」


 穂積さんは、停電にはならなかったみたいだな、と言いながら立ち上がり、席に戻る。

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