ウェディングドレスと6月の雨

 待ち合わせ場所は私の自宅の最寄り駅から2駅。電車を降りて、一度化粧室に寄る。服装をチェックして、ネックレスのズレを直して赤い口紅を引いた。鏡に映る大人びた自分を見て、身震いした。これから穂積さんに会える……。

 カードを翳して改札を抜ける。外は快晴。日差しは強い。本当はドキドキして手も震えてるくせに、何でもないフリで辺りを眺める。小さな駅の広場、穂積さんはすぐに見つかった。私が見つけたときにはこっちを見ていたから、先に穂積さんが私を見つけたのだろうけど。小走りで駆け寄る。いつもよりヒールの高い靴、穂積さんの顔が数センチ、いつもより近い。


「……こんにちは。待ちました?」
「いや」


 そう微笑む穂積さんはジーンズに黒いポロシャツ、スニーカーとラフな格好だった。私はかっちりとしたスーツでは無かったけれど、少しハズしてしまったかもしれない、と後悔した。


「行こうか」
「はい」
「キャバクラ」
「え?」
「冗談」


 穂積さんはクスクスと笑う。右手を上げて、あっち、と指をさす。ロータリーの向こうに続く通りには、商店街。下町の雰囲気、どこか懐かしい。ぐるりとロータリーを回り込んでその商店街に入る。開いてしまった自動ドアから冷気が漏れてひやりとした。

< 67 / 246 >

この作品をシェア

pagetop