ウェディングドレスと6月の雨
自宅の最寄り駅から僅か2駅なのに初めて来る街。
「飲めた? 年代物のワイン」
「いえ。私が会場に着いたときにはもう乾杯は終わっていて」
「飲めなかったのか」
「はい。残念ですけど……。でも穂積さんこそ一番の立て役者なのに」
「俺は何回か飲んだことあるから。営業ってこういうとき得だよな。契約を取り付ければ真っ先にご褒美にありつける。本来なら製品を開発したエンジニアとか、インパクトのある広告を作成した広報室とか、携わった皆がご褒美にありつけるはずなのにな」
「じゃあ、わざと欠席に?」
「いや。本当に得意先から呼ばれてたから」
駅前の商店街、その一角にそびえ立つテナントビル。そこだけがにょきんと伸びてトーテムポールみたいに突きだしていた。窓の数を何となく数える、8階建てくらい。その入口に穂積さんは入っていく。オフィスビルらしいエントランスには社名の入ったシルバーの郵便受けが並んでいる。週末でビルはお休みなのか、エアコンはついておらず、空気はむっとした。正面のエレベーターに乗ると穂積さんは最上階の8のボタンを押した。扉が閉まるとぶうんと音を立てて加速度を付けて上昇していく。
「飲めた? 年代物のワイン」
「いえ。私が会場に着いたときにはもう乾杯は終わっていて」
「飲めなかったのか」
「はい。残念ですけど……。でも穂積さんこそ一番の立て役者なのに」
「俺は何回か飲んだことあるから。営業ってこういうとき得だよな。契約を取り付ければ真っ先にご褒美にありつける。本来なら製品を開発したエンジニアとか、インパクトのある広告を作成した広報室とか、携わった皆がご褒美にありつけるはずなのにな」
「じゃあ、わざと欠席に?」
「いや。本当に得意先から呼ばれてたから」
駅前の商店街、その一角にそびえ立つテナントビル。そこだけがにょきんと伸びてトーテムポールみたいに突きだしていた。窓の数を何となく数える、8階建てくらい。その入口に穂積さんは入っていく。オフィスビルらしいエントランスには社名の入ったシルバーの郵便受けが並んでいる。週末でビルはお休みなのか、エアコンはついておらず、空気はむっとした。正面のエレベーターに乗ると穂積さんは最上階の8のボタンを押した。扉が閉まるとぶうんと音を立てて加速度を付けて上昇していく。