ウェディングドレスと6月の雨
蓋を開けて手渡すと、穂積さんはそれを受け取った。ほんの少し触れた指……。私はボサノバを聴くフリでしばらく黙っていた。
車は直に大きな国道に出る。片側2車線の広い道をぐんぐん進む。穂積さんもハンドルを握りながら指でリズムを取って曲と運転に没頭しているようだった。しばらくしてビルや住宅街だった景色は雑木林に変わる。そして開けた面から海が見えてきた。既に真上に来ていた太陽は海に反射し、キラキラと波模様を光らせる。水平線には貨物船がゆったりと浮かび、手前にはカラフルな帆を張ったヨットが茶化すようにちょこまかと動いている。空には入道雲、泳ぐように飛ぶカモメ、飛行機。新入社員研修のときにも来た海だけど、あのとき社会人なりたての私は研修に必死で景色を愛でる余裕もなかった。
「うわあ……」
感嘆の声を上げた私を、コドモみたいだな、と穂積さんは笑う。
「笑わないで」
「はいはい」
「海は研修以来ですけど、こんなに綺麗だったなんて」
「新入社員研修は春だろ。春霞で空も海もグレーで境目もないしな」
「穂積さんってよくドライブするんですか? 」
「……ああ」
穂積さんは一呼吸置いて返事をした。私はまた馬鹿な質問をしたと後悔した。
車は直に大きな国道に出る。片側2車線の広い道をぐんぐん進む。穂積さんもハンドルを握りながら指でリズムを取って曲と運転に没頭しているようだった。しばらくしてビルや住宅街だった景色は雑木林に変わる。そして開けた面から海が見えてきた。既に真上に来ていた太陽は海に反射し、キラキラと波模様を光らせる。水平線には貨物船がゆったりと浮かび、手前にはカラフルな帆を張ったヨットが茶化すようにちょこまかと動いている。空には入道雲、泳ぐように飛ぶカモメ、飛行機。新入社員研修のときにも来た海だけど、あのとき社会人なりたての私は研修に必死で景色を愛でる余裕もなかった。
「うわあ……」
感嘆の声を上げた私を、コドモみたいだな、と穂積さんは笑う。
「笑わないで」
「はいはい」
「海は研修以来ですけど、こんなに綺麗だったなんて」
「新入社員研修は春だろ。春霞で空も海もグレーで境目もないしな」
「穂積さんってよくドライブするんですか? 」
「……ああ」
穂積さんは一呼吸置いて返事をした。私はまた馬鹿な質問をしたと後悔した。