ウェディングドレスと6月の雨
 その翌週は映画、翌々週は高原へドライブ。私と穂積さんの奇妙な関係は続いた。


「総務課って昼メシはどうしてるんだ?」
「お弁当の人とか、コンビニとか」
「食べに出ないのか?」
「たまにですね」
「外に出るのは可能か」


 8月中旬。穂積さんから声を掛けられた。朝、会社のロビー。ばったり会った。たまに見かけることもあるのだけれど、そんな朝は嬉しい。ラッキーデーだ。


「はい。でもお昼休みは1時間なので。ホントに近場でないと……」


 ランチのお誘いだろうか、少し期待をしてしまう。週末に出掛けたことはあっても、ランチは初めてだ。


「車を出せば間に合うか? 大通りのちょっと先にケーキ屋が出来たろう?」
「あ、知ってます、そこ。パティスリー峻ですよね。まだ行ったことが無くて。ランチはケーキまで付いて1000円って気になってて」
「行くか?」
「行きます」
「じゃあ昼に駐車場で」


 穂積さんは明るく私に微笑んでエレベーターに乗った。私は奥にある階段を使おうと歩いていると、他の社員がチラチラと私を見た。

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