引き立て役よさようなら(番外編追加)
「達・・時間じゃんね?」
ヘッドフォンをして一生懸命ギターを弾いている達央に、尚也が時計を指さしながら
ジェスチャーで時間を教える。
「あ・・・やべ・・」
達央はヘッドフォンを外し、ギターをスタンドに置いた。
「ごめん・・・じゃあ・・
ちょっと行ってくるわ。」
すると京介が
「しかし・・・すごいよな。ちょっと前の達じゃ考えられないわ。
 愛する彼女のために時間を割いてピンチに駆けつけるんだろ?」
「いや・・・今回は行かないとまずいだろ~~」
翔はドラムスティックを使って思いっきり背伸びをする。

本当の事を言うとスケジュールはほぼ埋まっていた。
ただ融通がききそうな2日を希望日にしたから
今回の経緯はメンバー全員に話し、都合をつけた。

「でも・・・お前が大野達央ってこと・・・相手の男は薄々感ずいてんだろ?
大丈夫か?俺らみたいなバンドでもネタにしたいやつとかいるから
油断すんなよ。お前だけの問題じゃない。優花ちゃんだって関わってくる事だからな」
いつもは茶化してばっかりの尚也だが
今日はいつもと違って真剣だった。

「わかってるよ・・・・」
「わかってんならさっさと行けよ。優花ちゃん待ってるんだろ?」
達央はキャップをかぶると片手を上げ。
じゃあ・・・といってスタジオを出た。

尚也は、はぁ~~と溜息をつくともたれかかる様にイスに座った。
「尚也にしては珍しんじゃない?あんな言い方・・・」
反対側でアコースティックギターのチューニングをしながら
京介が呟いた。
尚也はちらっと尚也に視線を向けると
「達が切れたこと・・・・1回だけあっただろ・・・」
「・・・・ああ・・あれか・・」
「ま~あの時とは全然状況が違うから何ともいえないけどさ・・・暴走しなきゃいいけど
っていう心配。そうなったら一番傷つくのは達じゃなくて優花ちゃんじゃないかと思って」

3人は黙ってしまった。
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